安倍政権への審判とも言える第25回参議院議員通常選挙を控え,世間の議論も沸騰している。ちょうどいい機会なので,元消極的支持者として,私の個人的な安倍晋三氏に対する見方をここにまとめておきたい。
比類なき凡人
私の安倍晋三氏に対する印象は,一貫して,一言でいえば「比類なき凡人」だ。森喜朗氏や麻生太郎氏のようなアクの強さもなく,鳩山由紀夫氏のように浮世離れした感じでもなく,小泉純一郎氏のようなカリスマ的な指導者でもない。特に知的な印象も無いし,特別な才能があるという話も聞いたことがない。かといって上皇陛下のような人格者にも見えない。
まさに,政権支持者がよく自称する「普通の人」だ。肩書きを知らなければ,誰も特別な人だとは思わないだろう。しかし,全くの凡人では首相として選ばれようがない。祖父と大叔父が首相だった,という圧倒的な政治的背景を持った凡人である,というところに安倍氏の個性がある。これこそ安倍氏が支持されてきた理由であり,これからの安倍政権の危うさなのだ,と私は思っている。
あくまでも凡人として
一年前後で首相が交代する政治的混乱が続き,経済的にも冷え切っていた頃,第二次安倍内閣の誕生は必然的なものだったと私は考えている。当時,多くの日本国民が求めていたものは何より安定だった。安倍氏の無難そうな人物像はそこに上手くはまっていたし,消極的支持に回った私自身も含めて,国民の選択が間違っていたとは思っていない。
ただ,多数派の支持はあくまでも消極的なものであって,安倍氏に特別な期待が抱かれていたわけではない。今でも一番多いのは,安倍政権を手放しで賞賛は出来ないが,かといって他の政治家では安心出来ない,という声だ。
安倍氏はあくまでも凡人として要請され,凡人として振る舞うことを求められている。ここはご本人にも,自民党にも,一部の支持者にも間違えてほしくないところだ。
こんなことをよく思うのは,最近の熱心な政権支持者と不支持者がやる論争への違和感からだろう。ある人は安倍氏を理想的な指導者のように賞賛し,ある人はヒトラーのような凶悪な独裁者だと言う。物事が単純化・過激化されやすい SNS のせいでもあるだろうが,どちらも冷静さを欠いているせいで,不支持者には安倍政権の「現実的な長所」が伝わっていないし,支持者には安倍政権の「現実的な短所」が伝わっていない。