{希哲18年9月17日の日記 K#F85E/0758-8A32}
宇田川浩行{『友人・鈴木仁大の想い出』 K#F85E/0758-F431}
宇田川浩行知り合ってからかれこれ20年になる友人,「鈴木さん」こと鈴木仁大が長年の夢を叶えたという知らせが先日あり,色々なことを思い出していた。なにせ私が20歳頃の出会いなので,大人になってからの人生の想い出にずっと関わっている人物だ。
20歳の誕生日を迎えようかという頃,私は奈良県にある某宗教の施設にいた。閃きによって17歳で希哲館事業の青写真を得ていた私は,この事業の絶望的な道程に絶望していた。自殺未遂騒動まで起こし,親戚一同を巻き込んで,「更生」のためあちこち連れ出されていた。その一つが,某宗教の体験ツアー的な行事だった。これについては色々と面白い話があるが,長くなるので端折る。とにかく,その合宿所のようなところで,相部屋だったのが鈴木さんだ。
第一印象は最悪だった。外見は,明るく染めた髪を逆立て,カラフルな古着にふざけた小物をごちゃごちゃ引っ提げ,アメカジなんだかパンクファッションなんだかよく分からない格好をした,当時22歳か23歳の若い男だ。いかにもろくな教育を受けていなさそうで,クスリでもやっていそうな雰囲気だった。当然ながら,この時,この人物から人生で一番大きな影響を受けることは知る由もない。
こんな男とはいえ相部屋なので,多少は打ち解けてくる。というより,この男,外見の割に礼儀正しく,気さくな良い兄ちゃんだった。勉強とはあまり縁が無さそうだったが,地頭が良いのか,話していても面白い。ある日,オールディーズが好きということで意気投合してからは一気に仲良くなってしまい,それからはよく行動を共にするようになった。この頃の私は,希哲館事業への絶望を,夢に酔ったような昔のアメリカ音楽で紛らわしていたのだった。
私も鈴木さんも,この宗教の信者でもなければ信者になるつもりもなく,この非日常的な体験を,ある種のテーマパークのように楽しんでいた。それでいいという気楽な一般向けの行事でもあったので,そこには老若男女いろいろな人がいた。そして,鈴木さんはあっという間にそこで一番の人気者になっていた。若い女の子達から強面の老人まで,鈴木さんが好きだった。お洒落で面白くて,誰にでも誠実で優しい人だ。中肉中背だが,顔は若い頃の塚本高史に少し似ていて,お世辞抜きにいわゆるイケメンだった。
聞けば,国内外あちこち旅をしながら,自分なりの生き方を模索しているという。ここに来たのもその一環らしい。旅先での面白い話もよく聞かせてくれた。色々な所で色々な人と触れ合って,ドタバタしている喜劇的な生活が楽しそうだった。むしろ,鈴木さんより人生を楽しんでいる人はいないのではないかとすら思えた。言ってみれば,今風の寅さんだ。
{希哲18年7月8日の体調 K#F85E/0758-C3A7}
宇田川浩行朝から絶好調だったが,11時近く,赤く腫れていた背中のしこりがついに破裂した。
身体の調子が非常に良かったので,出先でちょっとした力仕事をしていたら,背中の方で微かに物が裂けるような音がしたが,痛みも無かったので全く気にしなかった。間もなく,背中に血が滲んでいると人に言われて気付いた。このしこりが出来ているのに気付いた(6月27日の体調記録)のも,身体の調子が妙に良く,調子に乗って動かし過ぎた翌日で,作業内容も含めて状況がよく似ている。しこり自体は違和感を覚えていたその数日前から出来ていたはずだが,肥大化を促進してしまうような身体の動かし方だったのかもしれない。
シャツを脱ぐと,裂けた所から血が流れ出て止まらなかった。少し様子を見ていると,オレンジ色に近い粘り気のある血が噴き出したが,基本的には水っぽい血だった。見る見るうちに腫れは小さくなった。この時も特に痛みはなく,むしろ毒が抜けていくような快感すら覚えた。
絆創膏で応急処置をしてもらってからすぐに駅前の皮膚科に行き,およそ5分〜10分ほどの切開処置をされた。初めてのところなので流れがよく分からず,明日また様子を見せに来るようにとだけ言われてさっさと帰らされた。飲み薬と軟膏でしばらく様子見になりそうだ。
しこりの正体も説明されず分からなかったが,少なくとも癌のような悪性腫瘍ではなさそうで安心した。外見は粉瘤に似ているものの,ネットで見るのとは少し様子が違う。穴のようなものは見えず,破裂するまで,手で押しても何かが出てくる様子はなかった。異臭も終始ほとんどせず,破裂した時も血以外の何かが出てきたわけではなかった。ただ,血の色と粘度がやや異常ではあった。後で考えると,朝,一時的に鼻に付く微かな臭いがした気はするが,触った手が臭うわけでもなく,破裂で出てきた血から臭うわけでもなく,気のせいな気もする程度のものだった。
処置中は流石に痛かったが,術後も特に痛みはなく,むしろ腫れが物に触れた時の痛みがなくなり過ごしやすくなった。すっきりしたので気分も良かった。ただ,微量の出血はしばらく続きそうだ。