びりつ【備立】ビルド(build)の希哲館訳語。「そなえだて」(備え立て)とも読めるが,これは陣立ての同義語。
希哲10年4月8日,宇田川浩行により考案。
3日の開発から6日間に渡って続いたデライト小理腑をいったん終えた。
結果的には主に装体書整理とテンプレート整理だったが,これにより,保守性と体感表示速度の大幅な向上が見られた。
装体書とテンプレートは,Cμ によるデルン初期実装から長いこと継ぎ足しで使ってきたため,古い記述や譜類に埋もれて目的のものが探しにくいといった問題が慢性的にあった。分割すべき記述が一つの譜類に詰め込まれている,逆に,一つにまとめておくべき記述が複数の離れた譜類に分散している,といったことがよくあった。今回の小理腑ではこの点が大きく改善した。
テンプレートの方は折に触れて整理してきたからまだマシだったが,装体書の方は適当に分割した譜類に大量の記述が詰め込まれている状態だった。そもそも SySS の備立すら適当で,.syss 譜類があっても .scss が無いと換配されないなど,多数の譜類を管理出来る状態では無かった。これを機に備立方法から整備した。
装体書整理は当初,HTML の肥大化を恐れて埋め込み装体書の見極めに時間をかけ過ぎてしまっていたが,この日,JavaScript や HTML に gzip 圧縮がかかっていなかったことに気付いた。ちょっとした deln.conf の間違いだったが,これをきっかけに吹っ切れ,作業が捗るようになった。結局,転送量を大幅に削減出来た分,多少の冗長性には目を瞑ることにした。
これら作業の結果として,目的の装体やテンプレートにすぐ握接出来るようになり,埋め込み装体書の調整等も的確に行えるようになった。
表示速度は,ページにもよるが,DOMContentLoaded までの計測値で0.5秒近く短縮した。これに装体適用の合理化も加わり,体感表示速度ははっきり向上したのが分かる。溶明の動き付けをいったん削除したのも大きいかもしれない。デライト初期実装で読み込みの中途半端な遅さを誤魔化すため0.3秒の溶明を入れていた。
現時点でここまで高速化に繋がったことは思わぬ収穫だった。これまで,「デライト高速化」は後縁の最適化を中心に考えてきた。後縁の最適化余地の大きさと負荷軽減を重視していたこともあり,前縁最適化は期待も重視もしていなかった。
希哲13年の前縁改革で前縁の重要性は分かっていたつもりだったが,まだ認識が甘かったようだ。これに気付いたことも大きな収穫と言えるだろう。
そもそもスクリプトの動的読み込みに使っている @icl() とその周辺整理によって生じた描画乱れ解消のために始めた作業で,あまり多くは期待していなかったが,結果的に大収穫となった。
ただし,10日までに盛り込むつもりだった付徴が後回しになり,デライト収益目標達成にどう影響するかは不透明だ。
問題が解消するまで出振るい出来ず,他の作業が出来なくなっていたこともあり,作業項目としてのデライト小理腑はここでいったん完了とすることにした。整理が必要な部分はまだまだ残っているが,ほとんどは漸進的に作業出来る部分だ。いま出来る範囲でまとまった時間を使ってやる理腑はこれが限度だろう。
日本の情技業界を騒がせている業務素交流出事件に思うところあり,希哲館でも原則として素交を公開していく「素交公開原則」の採用を本格的に検討し始めた。
昨年の今頃もそんなことをぼんやりと考えていたが,特にこの頃,描出公開原則の成功に確信が持てるようになったり,政治参加方針の公開が考えられるようになったり,「隠すべきものを持たない強み」を実感することが多くなっていた。となれば,素交公開も自然の流れだろう。
もともと虎哲関係の素交は独自性が強過ぎ,動作環境も備立方法も特殊,文書や込め言には独自用語と希哲館訳語が満載という状態であり,盗んだところでまともに運用するのは不可能だ。これを「自然難読性」と呼び,ある種の強みと考えていた。
第一には,私自身の完璧主義的な性格であり,見せる必要もないところで不完全なものを晒したくなかった。
次に,希哲館事業収益化の不可能に近い困難さがあった。万が一にもなさそうだった成功の可能性を探る上で,万が一でもその障害になりそうな要素は排除しなくてはならなかった。手札は一つでも多い方が良かった。
これについては,デライト収益化が実現してしまえば無用の心配になる。
もう一つ,技術的な問題もある。昔から,デルンを基礎にした版存管理司組を構想してきたこともあり,素交公開するなら独自の基盤でと考えていた。無論,そんなものを開発する時間は無かった。
色々な意味で余裕が必要になるので,いずれにせよデライト収益化後に決断することになるだろう。
素交公開原則の利点はいくつも考えられる。献典としては死蔵してきた希哲館技術体系の宣伝,デライトも含めた希哲館事業全体の透明性・信頼性の向上,機密保持に関する費用削減とリスク低減,そして最も大きいのは開発者コミュニティを作れることだろう。
「KitHub」というのは一昨年思いついたことだが,それこそ GitHub のように成長すればそれだけで希哲館事業の強力な武器になる。
この日は久しぶりに希哲館のマスコット構想「きっとん」を思い出し,具体的なイメージを練ったりもした。これがのらくろに似ていることに気付いたのは収穫だった。
ようやく DG_T 周りの交度を整理し終え,備立・動作確認まで出来た。
KNEST 隠しの実装はこれからだが,この時点で求頼の多さ・遅さを補ってあまりある性能改善が見込めることが分かった。これまで実装・運用の試行錯誤の中で LCK() による排他制御がかなり冗長にかかっていたが,KNEST 隠しを前提に交度を整理し,無駄な排他制御を大方削ったことで多糸の利点を十分に引き出せるようになった。
後の実装・最適化は漸進的に行えるものばかりなので,明日一通り点検・手定めを行い一段落としたい。
明日はこれに加え,中断していた新規利用者登録(自我登録)からの動線整備の作業を終わらせ,デライト宣伝攻勢に転じたい。
KNEST 隠し整備を始めた26日の開発からここまで,休日などを除いて正味1週間ほどかかったが,北極5丁目も半分を残してこの成果なら上出来だろう。