昨日の一日一文では,デライトにおける対 Google 戦略の一環とも言える「全知検索」について書いた。今日は,対 Facebook 戦略の一環「KNS」(knowledge networking service)について少し書いてみたい。
と言っても,KNS 自体について説明することはそれほど多くない。Twitter のように日常的で気軽な投稿をしながら,投稿を柔軟に関連付けて保存したり,利用者同士で参照し合うことが出来る知的交流サービスのことだ。百聞は一見に如かずで,デライトを実際に見て回るのが一番早いだろう。
「デライトの対 Notion 戦略」でも書いたように,デライトが目先の目標を達成する上で最重要視しているのは対 Notion 戦略だが,それはあくまでも通過点に過ぎない。
私は,個人知識管理サービスが検索演心,SNS を越えるネットサービスになると考えている。しかし,現状,流行りの Notion も,それに追われている業界最大手 Evernote も,産業全体の中では小さな存在だ。企業規模も,いわゆる GAFAM には遠く及ばない。
デライトの対 Notion 戦略というのは,そんな小さな世界を飛び越えて,世界の頂点を目指すための足掛かりなのだ。
GAFAM の中でとりわけ Google と Facebook を重視するのは,この二社が世界の「二大純インターネット企業」だからだ。ネットサービスは,資金力ではるかに劣る日本企業がアイデア一つで世界の頂点に挑戦出来る唯一の分野であり,この二社は乗り越えるべき成功模体だと考えている。
(ちなみに,Apple・Amazon・MS もインターネットを活用する企業ではあるが,その中核事業がインターネットで完結するものではないため「純インターネット企業」とは言えない。なぜそこが重要なのかは上述の通り参入障壁の問題による)
乗り越えるためには,明確な武器が必要になる。その一つが昨日簡単に説明した全知検索であり,もう一つが KNS というわけだ。
“SNS の課題”という視点から見れば,情報の瞬間的な共有には向いているが蓄積に向かない,感情優先で社会分断を助長する性質がある,デマ・ヘイトのような低質・悪質な情報が氾濫しやすい……といった問題への解決策を KNS は持っている。
また,“個人知識管理サービスの課題”という視点から見れば,ツイートのような知識の材料となる情報を十分に拾えていない,という問題への解決策となる。
いま,Notion がどんなに流行っていようが,その話題や知見はほとんど Twitter などで刹那的に流れていくだけ,という現状を,私はいつも「もったいない」と思いながら眺めている。日常のささやかな気付きは,知識の極めて重要な源泉だ。
それに気付いて,自分で適当なサービスにツイートを保存している人は昔からいるが,SNS の機能を組み込んだデライト以外の個人知識管理サービスというのは寡聞にして知らない。両者が調和するサービスの設計が意外に難しいのだ。
個人知識管理サービスに関する話題が主に SNS で共有されているうちは,まだ驚異的なサービスではないのだろう,と思う。“本命”は恐らく,SNS の機能すら取り込んでしまうだろう。私はこれを KNS と呼ぶ。