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{なぜ日本の情技(IT)業界は薄給なのか K#F85E/5B28-38A8}

日本の情技(IT)業界には長年,激務薄給というイメージが付きまとっている。特に技術者の待遇の悪さはよく語られるところで,アメリカを筆頭に世界中で情技産業が国を牽引する花形産業に成長する中,日本の情技業界はお世辞にも人気があるとは言えない状況だ。

世界の企業の時価総額を見れば,最上位を独占しているのは「GAFAM」などと呼ばれるアメリカの情技企業群だ。近年では,「BATH」と併称される中国の情技企業群の成長も著しい。日本企業はといえば,トヨタ自動車が最上位で,それも40番のあたりで燻っている。

日本人は,情技産業を新しい時代の産業として育成出来なかった。これが今のところの現実だ。為替がどうだ物価がどうだ,SIer はともかく新興ベンチャーなら……見方は色々あるだろうが,この全体的な惨状を否定することは出来ない。

そんな中,よく聞く議論に「技術者の待遇」を問題視するものがある。技術者が報われないせいで日本の情技産業は発展しないんだ,という理屈なのだが,私は因果関係が逆なのではないかと常々思っている。日本の技術者の待遇が悪いのは,単純に日本の技術者を使って大きな利益を生み出せる経営者がいないからだ。高級料亭が高級な食材を使うのは,高い食材を活かした料理を売って利益が出せるからだ,というのと同じくらい,ごく当たり前のことだ。

もっと問題の根を探っていくと,経営者技術者を上手く使えないのは技術を知らないからだし,経営者が技術を知らないのは,技術者が経営者にならないからだ。日本では,自分で業界の主導権を握ろう,という意欲を持った技術者は本当に少ないのだ。

技術者の待遇に問題が無いとは言わないが,誰か「上の人間」が何とかしてくれるのを待っているだけでは何も変わらない。反対に言えば,技術者にはこの世界を変える力があるということだ。今の日本の情技業界に足りないのは,そういう技術者たちの自覚なのだと思う。

{薄給}

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