1916年5月8日,アメリカ合衆国テキサス州ウェーコで,農場で働くアフリカ系アメリカ人のジェシー・ワシントン(当時17歳)が,ルーシー・フライヤー(当時53歳)の強姦・殺人容疑によって逮捕された。
同15日,取り調べ・裁判の過程に不審点があったにも関わらず,ほぼ白人で占められていた陪審員の決断は早く1時間程で死刑判決が出た。
退廷しようとするワシントンであったが,興奮した傍聴人達はワシントンに掴みかかり裁判所から引きずり出した。さらに,ワシントンは首に鎖をかけられ町の広場まで引きずられた。広場に着き,裸にされ殴る蹴るの暴行を受けたワシントンは,そのまま木に吊るされ,全身に油をかけられた。暴れるワシントンの指や爪先,性器を切り落とした群集は,ついに火をつけてワシントンを焼き殺した。
この騒ぎは野次馬を集め,最終的には1万人を超える群集がこの私刑を傍観していた。木に吊るされたまま黒こげの遺体となったワシントンを笑いながら観ている群集の写真が残っている。
合衆国においてこの事件は,当時の同国南東部で多発していた人種差別にもとづいた死刑(リンチ)事件の代表例としてよく知られている。