インターネットで多用されるポート(port)やソケット(socket)という概念だが,これに「波戸」(はと)と「挿口」(そうこう)という訳語をあてることを思いついた。
「波戸」(はと)は「波止」とも書いて,陸から海に伸びた細長い堤を指す言葉だ。港の「波止場」はこれが築かれている場所を指し,積荷の上げ下ろしに使う。「ポート」というのは港,受け渡し口という意味だから「波戸」は非常に直感的な訳語だ。「波止場」はともかく「波止」は一般に単独で使わないし,「波戸」という表記はさらに珍しいので専門用語としても紛らわしくない。もちろん,「ポート」の語感に近いことも重視している。
ポート番号は簡潔に「戸番」(とばん)と訳し,「〜番ポート」という表現は「〜番戸(ばんと)」と訳す。使ってみると,これが実に簡潔かつ直感的で便利だ。「波戸」は汎用性が高い表現なのでインターネットに限らず「ポート」の訳語として使えるはずだ。
「挿口」(そうこう)はとくに説明の必要もないだろう。訓読みの「さしぐち」というのは一般的な表現だし,音読みすると「ソケット」に近い音になる。意味も完全に合っていて,なぜ今まで誰も使わなかったのか不思議なぐらいだ。例えば BSD ソケットは「BSD 挿口」と訳せるが,こちらも殆んどあらゆる分野で通用する訳語だろう。
地味でもこういう訳語が使えると,技術文書がずっと読みやすく楽しくなる。